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「食べる」を研究する。

当研究室では、なぜ食べて、食べるとどうなるのか。さらに食べ過ぎ(過栄養)では、なぜ生活習慣病がおこるのか?そのような疑問を研究しています。例えば、腎臓からの糖排泄を増やすと、明らかな低血糖ではないのに、お腹がすく。こういう現象はなぜ起こるのか?食事を食べると、肝臓では糖が使われて、脂質が蓄積される。どんな仕組みで?食べ過ぎて起こる脂肪肝を改善する方法は?などなど、現在の主な課題を列挙しました。ざっくりと書くと、簡単な疑問のように見えますが、それぞれの研究で得られる成果は、世界の第一線クラスと自負しています(業績のページを参照ください)。次に、具体的な研究内容について、下記に示します。

「食べる」ことを感知する脳の役割の研究

脳は、栄養状態を感知し、体の糖・エネルギー代謝を調節しています。例えば、インスリンやアミノ酸の血中レベルの増加を脳が感知すると、肝臓での糖産生の抑制し、脂肪組織での脂肪分解の促進などの作用を引き起こします(図1)。脳は、交感神経や迷走神経といった自律神経系を介して、末梢臓器の代謝機能を調節します。当研究室では、脳が迷走神経を介して、肝臓糖産生を制御するメカニズムを解明しています(Cell Rep 2016, Diabetes 2013など)。現在も、糖・エネルギー代謝を制御する脳・末梢臓器連関のメカニズムと役割の解明を進めています。

脳を中心とした臓器連関と糖・エネルギー代謝調節

図1)脳を中心とした臓器連関と糖・エネルギー代謝調節

「食べ過ぎる」と代謝異常が起こるメカニズムの研究

食べ過ぎ、すなわち過栄養では、2型糖尿病・脂質異常症・脂肪肝などの生活習慣病を引き起こします。当研究室では、過栄養による生活習慣病発症のメカニズムの解明を進めています。最近では、肝臓は、脂肪肝になると、エネルギー取り込みを減らし、肝臓自らを保護しようとする仕組みを持っており、その仕組みの為に、肝糖取り込みが低下し高血糖が発症することを見出しています(図2;Nat Commun 2018など)。では、脂肪肝でも肝糖取り込みを維持させると何が起こるのか?2型糖尿病の新しい治療法になるのか?現在、研究中です。

脂肪肝での肝糖取り込み低下のメカニズム

図2)脂肪肝での肝糖取り込み低下のメカニズム
グルコキナーゼはGKRPから解離し、活性化する。脂肪肝では、GKRPがアセチル化されるため、グルコキナーゼが活性化できず、糖取り込みが障害される。

「食べ過ぎる」ことで、発症した生活習慣病の新規な予防法・治療法の研究

過栄養により発症した生活習慣病を、「食」の質を見直すことで、治療・予防する方法を研究しています。最近では、豆たん白質の摂取が、脂肪肝を改善することを見出しており(図3;J Nutr 2017)、現在、そのメカニズムの解明を進めています。様々なアミノ酸や脂質は、それぞれに特徴的な栄養応答を体に引き起こします。そのような栄養応答の中で、有益なものを見出し、生活習慣病の治療・予防に役立てることができれば、と取り組んでいます。この取り組みは、食品企業などとの産学連携により行っています。

脂肪肝の新規な治療・予防食材

図3)脂肪肝の新規な治療・予防食材
メカニズムは不明であるが、緑豆たん白質を摂取すると、脂肪肝の発症が抑制される(J Nutr. 2017;66(4):1008-1021)。この知見は、J Nutr誌の表紙を飾っている。現在、そのメカニズムの解明を進めている。

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